糖尿病の原因・食事管理・検査指標を正しく理解しよう
日本では、糖尿病またはその予備群とされる人が約2,000万人に上るといわれています(厚生労働省「国民健康・栄養調査」2023年)。糖尿病は血糖値の異常だけでなく、心臓病・腎臓病・視力障害など、全身に影響を及ぼす生活習慣病の一つです。

1. 糖尿病の発症原因とは
糖尿病(とうにょうびょう)は、血糖値(けっとうち)を下げるホルモン「インスリン」 の働きが低下することで起こる慢性疾患です。 血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなり、血糖値が慢性的に高い状態が続きます。 その結果、血管や神経、腎臓、目などにさまざまな合併症が生じる危険があります。
主な種類と原因
| 種類 | 主な原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1型糖尿病 | 自己免疫反応によりすい臓のβ細胞が破壊 | 若年層に多く、インスリン注射が必須 |
| 2型糖尿病 | 遺伝+生活習慣(過食、運動不足、肥満、ストレスなど) | 日本人糖尿病の約9割を占める |
出典:日本糖尿病学会(JDS)「糖尿病とは」/厚生労働省「糖尿病予防のための健康づくり」
2. 糖尿病の食事管理の鍵
糖尿病治療の基本は「薬物療法」「運動療法」「食事療法」。 なかでも食事療法は、日常生活の中で最も重要な自己管理です。
✅ 基本原則(3つのバランス)
1️⃣ 栄養バランスを整える 主食・主菜・副菜をそろえ、「一汁三菜」を意識。
| 栄養素 | 理想の比率 | 役割 |
|---|---|---|
| 炭水化物 | 50〜60% | エネルギー源だが摂りすぎ注意 |
| タンパク質 | 15〜20% | 筋肉・臓器をつくる材料 |
| 脂質 | 20〜25% | ホルモン・細胞膜の構成成分 |
2️⃣ 適正なエネルギー量を守る 身長・体重・活動量に応じて摂取カロリーを計算。 肥満を防ぎ、インスリンの働きを保つことが目的です。
3️⃣ 食事リズムを整える 1日3食を規則正しく、間食は控えめに。 血糖値の急上昇・急下降を防ぐことが大切です。
🍚 主食(炭水化物)の選び方
- 白米よりも 玄米・雑穀米
- パンは 全粒粉パン、麺は そば を選ぶ
- 食べる順番を「野菜 → 主菜 → 主食」にすることで血糖上昇を抑制
🍗 タンパク質(主菜)のポイント
- 肉よりも 魚・鶏むね肉・大豆製品(豆腐・納豆) を中心に
- 調理法は「焼く・蒸す・煮る」が基本。揚げ物を控える
🥦 副菜(野菜・きのこ・海藻)
- 野菜は1日 350g以上(厚生労働省推奨)
- 食物繊維が糖の吸収をゆるやかにし、血糖の安定に役立つ
☕ 飲み物の落とし穴
- 清涼飲料水・果汁飲料・加糖コーヒーはNG
- 水・麦茶・緑茶・無糖コーヒーを基本に
💡 続けるコツ
- 「完璧」より「継続」
- ストレスを溜めない工夫(食後の散歩・ゆっくり食べる)
- 管理栄養士・医師との定期的な相談
出典:日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイドライン2024」/日本糖尿病協会「正しい食事療法」
3. HbA1cとは? 検査結果の見方を理解しよう
HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、過去1〜2か月の平均血糖値を反映する指標です。 血液中のヘモグロビンに、どれくらい糖が結合しているかを示します。 日々の血糖値変動よりも、長期的なコントロール状況を把握できます。
📊 HbA1cの基準値
| 分類 | HbA1c値(NGSP値) | 状態の目安 |
|---|---|---|
| 正常 | 5.6%未満 | 健康的な範囲 |
| 境界(糖尿病予備群) | 5.6〜6.4% | 生活習慣の改善が必要 |
| 糖尿病 | 6.5%以上 | 医療機関での治療対象 |
✅ 覚えておきたいポイント
- HbA1cは「直近の食事」ではなく「ここ数か月の平均値」
- 食後血糖が正常でも、HbA1cが高い場合は注意が必要
- 定期的な検査で変化をチェックし、目標値(6.0%前後)を維持
出典:日本糖尿病学会「HbA1cの意義と基準」/厚生労働省「健康診断・特定健診項目」
4. 糖尿病検査・治療にかかる費用の目安(日本国内)
| 区分 | 内容 | 自己負担(3割負担の場合) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 初診時検査 | 血糖・HbA1c・尿検査+診察 | 約3,000〜5,000円 | 初診料+検査費を含む |
| 継続通院(薬なし) | 食事・運動療法中心 | 月 約3,000〜4,000円 | 栄養指導料を含むことあり |
| 継続通院(内服薬あり) | 経口血糖降下薬+定期検査 | 月 約5,000〜7,000円 | 薬剤種類で変動あり |
| インスリン療法あり | インスリン注射+血糖測定器管理 | 月 約10,000〜15,000円 | ペン型・ポンプ型などで費用差あり |
| 入院治療・教育入院 | 1〜2週間の血糖コントロール入院 | 約5万〜10万円 | 医療保険適用・高額療養費制度で負担軽減可能 |
| 年間総額目安 | 合併症なし・内服薬治療の場合 | 約7万〜9万円 | 継続治療+定期検査ベース |
| 生涯医療費(参考) | 長期治療・合併症併発を含む | 約800万〜1,200万円 | 1型糖尿病患者での推計あり |
費用を抑えるためのポイント
- 健康保険が適用されるため、実際の支払いは総額の約3割。
- 高額療養費制度を利用すれば、1ヶ月の自己負担上限を超えた分は後日払い戻し可。
- 自治体によっては「特定健診」「糖尿病予防検診」を福祉か低コストかで実施。
5. まとめ ― 知ること・続けることが最大の治療
| 項目 | 内容 | 実践のポイント |
|---|---|---|
| 原因 | インスリンの働き低下 | 食生活・運動習慣の見直し |
| 食事管理 | バランス・適量・継続 | 糖質の質と量を意識 |
| HbA1c | 平均血糖を示す指標 | 定期的な検査で確認 |
糖尿病は「完治」よりも「コントロール」が大切な病気です。
正しい知識を持ち、自分の体と向き合うことで、
健康で長く充実した生活を送ることができます。
🔹参考文献・出典
主要参考資料
- 日本糖尿病学会(JDS)『糖尿病治療ガイドライン 2024』
- 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
- 日本糖尿病協会『HbA1cを理解する』
- 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター『糖尿病の正しい知識』
- withHeart「糖尿病の治療費はいくらかかる?」
関連公式リンク
- 日本糖尿病学会(JDS) — 「糖尿病ってどんな病気?」 ↳ jds.or.jp
- 厚生労働省 — 「健康・医療 糖尿病対策」 ↳ mhlw.go.jp
- 厚生労働省 — 「食生活指針の解説要領(PDF)」 ↳ mhlw.go.jp
- 日本糖尿病協会 — 「糖尿病とは(入門者向け)」 ↳ nittokyo.or.jp
- 厚生労働省 — 「食事バランスガイドについて」 ↳ mhlw.go.jp
- 厚生労働省 — 「特定健康診査・特定保健指導」